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宮司が最近思ったことや
いま考えていることなど。

現代人と洗う文化

テレビのコマーシャルを見ていると、今からはビールの宣伝が特に目立ちます。
日常的にはシャンプー、ボディソープ、歯磨き粉、洗剤などが殊に多いですね。
私は一日置きに髪を洗います。年末年始にアルバイトに入る巫女さん達とこの話をすると、「毎日洗わないんですか」と驚かれました。彼女達は毎日、洗うと言うのです。これでシャンプーのコマーシャルが多い理由が分かりました。

最近、『洗う文化史』という面白い本が出ました。これによると貝原益軒という江戸時代の学者は、「風呂に入りすぎると気が抜けてしまうので、入浴は10日に一度、洗髪も5日置きで良い」と言っています。
実際、明治・大正時代までの入浴の習慣は、東北のある地方では、お盆と正月と祭りの日の3度という地域もありました。奈良県の調査では、冬場で月に10回、夏場はさすがに20回程であっと言います。
現代人は風呂は毎日入るものと思っていますが、昔の人は決してそうではなかったのです。

洗う事の普及に一役かったのは、花王石鹸で有名な花王(株)でした。昭和15年頃から「花王コドモ手洗い会」を全国各地で開催し、これを契機に手洗いの習慣、また身体を清潔にする習慣が広まっていきました。
また昭和44年から始まったテレビ番組、「8時だヨ!全員集合」(~昭和60年)も洗う文化を助長しました。俳優の加藤茶が番組のエンディングテーマに合わせて、毎週、「歯、磨けよ!」、「風呂入ったか?」と言って終わっていたのです。私も覚えています。
この加藤茶の二言が、寝る前の歯磨き、入浴の習慣を更に勧めたと言うのです。
ちなみに、この番組のスポンサーは、歯磨き粉のライオンでした。

この本はコロナ禍で清潔と洗浄が迫られる中、花王(株)と国立歴史民俗博物館との産学共同研究で生まれました。現代人の清潔志向の根源が解き明かされています。
是非ご一読を!(吉川弘文館 2200円)