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宮司が最近思ったことや
いま考えていることなど。

千々石の「ところ天」


 遅い夏休みをとって雲仙に行きました。雲仙に登る時には、いつも立ち寄る所があります。雲仙市千々石町の橘神社の近く、7月から9月迄、季節限定の「ところ天屋」です。      
今回も楽しみに車を走らせ、いざ着いてみると、戸口が閉まっている、加えて「閉店しました」との貼り紙。高齢の女性が営まれていたので、年齢に伴う閉店でしょう。残念でたまりません。
 自家製のそれはそれは美味しい「ところ天」でした。店の入口にはコンコンと湧き出る泉があって、良いテングサに加えて、この泉の水も美味しさを増していたのでしょう。
 実はこの場所には、江戸時代以前に大泉寺というお寺がありました。お寺の名前はここに湧き出る「泉」に由来して、大泉寺と名付けられたのでしょう


 千々石の人々は、450年も前の頃から、盛んに伊勢詣でに出かけていました。その際に伊勢での費用や帰りの旅費を、為替で事前に送金しています。その為替の取り扱いを行ったのが、この大泉寺でした。ここに必要なお金を振り込むと、大泉寺はその証明となる為替切手(証書)を発行します。伊勢詣での人々は、この為替切手を伊勢まで大切に持参し、伊勢で現金に換金して食事をしたり、お土産を買ったりしました。
 重い銭を携帯せずに、事前に送金して身軽に旅を楽しんだのです。大泉寺は言わば現在の郵便局・銀行のような業務も行っていたのです。
 泉のほとりで「ところ天」を味わい、遠い昔の千々石に思いを馳せる楽しみ、その一つが無くなりました。しかしコンコンと湧き出る泉は、ここに大泉寺が、そして美味しい「ところ天屋」があった事を、今後も伝えていく事でしょう。